「相手の面前で弱気を出してはいけない」加藤一二三氏の“強気”を支えた聖書の言葉
加藤一二三さん9月毎日更新 Q1. 勝負の上で大切にしている、座右の銘はありますか?
一度弱気になるとはまり込んでしまう
私と若手棋士との対戦を例にあげましょう。最近の若手棋士たちは、複数人で集まって研究会をしている方が多いそうです。みなで指し方や戦略を研究しているわけで。私も彼らが「研究会を開いている」という背景を知っていますでしょ。そうすると、こちらが弱気になっているときに、相手が見たことない手を指すといろいろと思ってしまうわけです。「これは見たことがない手だけど、彼らが研究会でテスト済みの手ではないか」、「相当な自信を持って指したのではないか」、このように思ってしまうんですね。
本当はそうじゃないこともあるんですよ(笑)。実際は共同で研究したといっても、なかなか明快な答えが出るものでもないですから。しかし、弱気になっていると相手の一挙手一投足が、自信に裏打ちされたものという風に思いがちなんですね。
つまり、そういった心配は“ 弱気”のなせるわざなのです。ですから、対局をする際には、決して弱気になってはいけません。これは大きな弱点になりますからね。反対に、こちらが“ 勇気”を持って戦いますと、見たことがない手を打たれても、例え困難な状況になっても、スイスイスイと乗り切っていけるような気持ちになるんですね。こちらが自信あり気に指すと、相手が勝手に深読みしてくれる可能性もありますから。
ですから、弱気になってはいけませんし、勇気もとても大切。そして、それらがないと落ち着いてあわてない戦いもできません。
この座右の銘を胸に戦い、42歳に初の名人位を獲得することできました。
明日の第二回の質問は「Q2.「負けパターン」のようなものはあったのでしょうか」です。
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